「水平線の逃げ水」
街に赤い光が見えた。
なんだろう?花火だろうか?
そんな光が見えたのだった。
そして、煙も見えていた。
街が燃えている。火事のようだ。
そのうち火事はその街を消してしまうほど火柱をたてている。
知らない遠くの街が燃え尽きようとしているのだろうか?
私は、ある国境に近い島に来ていた。
そして、あつい日差しの海岸を歩いていた。
海の水平線を眺めると、その風景がうかんで見えていたのだった。
蜃気楼だろうか?
それならばめずらしいと思って眺めていてその風景をみていたのだった。
ふと不安になって私のいる島の方を振り返った。
島は、優雅に風を受けて木々をゆらしていた。
島は、いつもとかわらずいつものゆっくりとした時間をすごしていた。
あの燃えていた街は幻覚だったのか?
そう思い、もう一度水平線に目をやった。
向こうに見えた赤い光の街はもう見えなかった。
蜃気楼だったのだろうか?
私の錯覚だったのだろうか?
強烈な記憶とおぼろげな映像は、私の中の幻覚だったのだろうか?
街は燃え尽きてしまって炎の光が見えてないだけだろうか?
そんな事を考えている空間とは別に、体は白日夢の中にいるように優雅な風にあたり砂浜のさざ波を遊びながら歩いている。それが現実だった。
蜃気楼に仮に切実があるとしたら、単なる映像だけだった。
しかしその後は、その前よりさざ波の優雅な音色より、砂浜が軽く痛く白く目に入る気がした。