【詩27】からっぽ
よくしゃべるね、まるで空白を埋めるように
次から次へとむなしい言葉の羅列を
明日を十分に持っているお前は、真っ白な今と明日に追い立てられている
人を傷つけて何かをしようという覚悟もなく
自分が傷ついてまで誰かに何かを与えるでもなく
そんなお前を見ていると、白い苦しみの残酷を知る。
本当は、少しは分かっているんだろう、絵の具をもっていない自分を
今の空間にそれぞれの色を塗りこむことをしたいんだね
嘘の涙の洪水を自分で泳ぐ覚悟も持たないのに
荒野への旅の準備もできていないのに
そんなお前を見ていると、地平線の残酷を知る。
いいさ、大したことではないよ
ほんとうは、誰もかれもそんな風なんだよ 老人さえも
ただ若いお前は、大量の空白の明日を持てましているんだ
大量の空白を使い切って、泣き叫ぶことの慰めさえ持たされていないのだよ
知ってるかい、お前のような子供がいたんだ
そいつは、モノクロフィルムしかない時代に、カラー写真を撮ってみたいと願った。
どこにもカラーフィルムなんて売ってない時代にそんな夢をみていた。
そして、時が過ぎ、初めてカラーで写真を撮った。
彼の夢の喜びは一瞬だった。10枚くらい写真を撮って飽きてしまったんだ。
そして、真っ白を使い果たした老人よりも何もかも失ってしまった。
カラー写真の夢が全てを奪ったんだ。
そんな夢だけを信じた彼を見て、人々は完全の残酷を知った。
お前は何を選ぶんだ?どんな残酷を背負うんだ?
2012.2.5 sorry