【文化1】コミック「蒼天航路」



蒼天航路コミック読みました。
三国志の曹操を主人公としたコミックです。

三国志は、吉川英治氏の単行本と横山光輝氏のコミックを読みましたが、ほぼ同じ内容で蜀の劉備玄徳と諸葛亮孔明が主人公の内容でした。原本が「三国志演義」*であったためと思います。

一方、蒼天航路では吉川英治氏と横山光輝氏のとは異なり奸雄である曹操が大英雄として描いてあります。その中でつぎのテーマに興味を持ちましたので記述します。

1.天命


蒼天航路では、天下人とは、天命を理解し天に導かれ忠実に行動するもののように描いてあります。天を信じてその導きに忠実であることがテーマで、三国の長である曹操・劉備・孫権にそのような天を信じ行動する才があるように描いてあります。
この点、乱世を生きる武人というのは、命を超えた部分で自分の役割を自覚し行動していく大きな自覚を持って生きていたのかもしれないし、「壮大な自覚」が時代を作ったのかなぁと思わされます。

2.歴史的汚名


蒼天航路でも吉川英治氏・横山光輝氏でもテーマとしてあるのが、「後世に汚名を残さない」というテーマです。NHKの大河ドラマでもよくこの「後世どう語り継がれるか」がテーマとなる場面があります。これが、以前から引っかかるテーマです。大体、人間社会とは後世に云々というように大層なものでしょうか?しばしば現代では、英雄を奸物と描くものも見受けられます。蒼天航路と吉川氏の作品においても、主人公が違えばこうも違うかと思わされますし、坂本龍馬も司馬遼太郎氏が小説にするまであまり明治維新の英雄と認識されていなかったと聞きます。後世にどう語り継がれるかなんて、本当にどう転ぶか分からない代物ですし、ナルシストの考えることの様な気がします。現在の情報化社会でも、小泉元首相やオバマ大統領を正確に後世に語り継ぐなんて不可能と思います。そして、「三国志演義」も諸葛亮孔明が歴史に自分たちの正当性を訴えるために残したのではないかと勘繰ってしまいます。

天命をさずかったものは、歴史にどう名前が残るかなんてチッポケな発想で行動しない気がしますがいかがでしょうか?
この点、アイデンティティに照らしてどう行動するかならば理解できます。ですから、後世に汚名では無く、日本人(その国の人)として正しいか間違いかはあると思います。

3.各作品を比較して


蒼天航路と、吉川英治氏の三国志を比較した場合に大きく異なるのが、血です。劉備は漢の皇帝の末裔として天下人の資格があるように描かれています。また、曹操は血を引いていないのに皇帝を名乗るので吉川氏の小説では奸雄(奸物)のように描いてあります。どちらの作品も漢の国の再興というテーマがありますが、吉川氏は日本の小説だからでしょうか血に正義があるように描いてあります。また、蒼天航路では天命の方が勝るというように、ある意味「機能主義」が血より正しいというように描いてあります。確か蒼天航路の作者(シナリオ)は中国の人だったと思いますので、その辺は自身のアイデンティティに照らし合わせて描いてあり面白く感じます(中国では大義さえあれば皇帝になれるお国柄ですので)。私自身どちらもその国のアイデンティティとして間違っていないと思いました。

以上つらつら記述しました。読んでみたいと思う方は「GEO」で借りれますよ。
では

*「三国志演義」:三国志の物語の原本。確か西暦500年(記憶定かでない)くらいの書物。

2009.11.15 sorry(2012.2.10 改訂)