【叙事1】大人



僕は大人になってしまった。

本当に


僕はあなたを絶大に尊敬し、どんな大人よりカッコいい人と信じて疑わなかった。
僕が他人だったら、今も哲人のようなあなたを尊敬しているだろう。

僕は、早熟ではなかった。
あなたに守られて、疑う事にいつも答えをくれるあなたの子供として、
疑いが晴れていく事に尊敬を感じていたから。


だが、不幸な事なのか、正しい事なのか分からないが、あなたを疑い出した。
それは、あなたに理解できない、僕自身にも越えられなかった悲しみを見たから。
本当の悲しみをあなた以上に感じた僕は、哲人のようなあなたに疑問を持ったし、全ての在りようにに疑問を持った。

そして、いつしかあなたを否定し、全ての教えを疑い出した。
どんなに立派な宗教の経典にも救えないものがあると感じた。
そして、誰も自分や人を救う事は出来ないと感じている。
自分に救いが欲しければ、自分を信じるしか道は無いと、今、感じているのです。


そんな、大人になってしまった僕に、あなたは昔の子供の僕を投影し、今でも正しさを押し付けくる。
そうさ、大概、常識ではあなたに間違いはない。
でも、哲人であるあなたが、常識を持ち出している事に、尊敬していたあなたに失望し、悲しく、そして、怒りさえ感じているのです。

僕の無謀かもしれない旅立ちを、あなたの常識で縛ろうとしている。
僕の無謀を、不幸せに感じているからだと分かるけれど、生きる本当の意味を「守る だけ」としか思わないあなたに本当に失望しているのです。


そんな、失望の中で、今日、昔のドラマを見た。
TVで放映され、懐かしく眺めていた。
そして、ラストのテーマソングが流れ出して

僕は、そのドラマを、あなたの膝に座って、見ていた自分を思い出し、あなたを世界で最高と思っていた幼かった自分を思い出した。
その瞬間の 暖かさ 安らぎ その全てが蘇った。


一人で生きる事を覚悟した自分に、どうしてこんなになれたのか?

どうして、旅する事を恐れないのか?


その答えは、あなただったと思い知ったのです。
間違っていないと、自分に言えるのは、あなたが守ってくれていた安らぎを知っているからなのだ。
そして、あなたの与えてくれた「愛情」というものを、あなた以上に信じているからなのだと気付き、今は、感謝しているのです。

2011.02.17 sorry